第165章

声はそれほど大きくなかったが、二人を驚かせるには十分だった。

山田澪は彼が風塵に塗れて入ってくるのを見て、まつげを震わせた。かつては朝な夕な思い焦がれたあの顔が、今や見るだけで息を詰まらせる。

長生きしないほうがいいわ、長生きしなければ、毎日この苦しみに耐える必要もないのに……

医者も少し気まずそうに、北村健が自分の言葉を聞いていたかどうか分からず、おどおどと立ち上がった。「北村さん」

北村健は大股で歩いてきて、まだ寒気を身にまとったまま、山田澪の隣に腰を下ろした。「彼女はどうだ?」

医者は言った。「熱は下がりました。今夜また熱が出なければ、大丈夫でしょう」

北村健はうなずいた。...

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